干物女の黒歴史ⅲ

干物女の黒歴史ⅲ

自我がすっっっごい

好きこそものの上手なれ

その日は2時間カラオケで歌ってからスナックに行った。

門前仲町の辰巳新道。雨が降っていた。

どこのお店に入ろうか迷っていると、雨の中お婆さんが傘を差して共用トイレの前に立ちながら「空いてるよ」と誘ってくれた。だが以前から気になっていたお店があったので礼をして通りすぎた。気になっていたお店に行くともうやっていない。こうなったらあのお婆さん(ママ)のお店に行くしかない!と勇気を出して、初めてそのスナックに入ったのだ。

ママはなんと83歳。毎日スナックに立っていて、帰りはいつも0時すぎ。ワンメーターの距離だからすぐにタクシー拾って帰っちゃうのよ、と笑いながら言った。地元は千葉。築地の魚に惚れて東京に出た。旦那さんが40歳くらいのときに亡くなってしまい、知り合いの方がお店を紹介してくれた。以来ずっとここはママのお店。スナックの名前はママの旧姓、お父さんの名字。

「踊り子号」が走り始めたときに東京駅に大きく熱海へおいで!の飾り付けがされていたこととか、昔は門前仲町は職人さんの町で仕事終わりに銭湯に行きくいっと一杯やってから家に帰っていたこととか、どのお話もすごく楽しかった。

 

でもママ、すごいですね。なんでこんなに続けられるんですか?

 

「好きこそものの上手なれ!やっぱり好きだからこんなに続けられるのよぉ。好きなものっていうのはね、人間誰でも必ずひとつはあるからね。」

 

インターネットが大好きで、IT業界に入った。大好きなインターネットを見ていると、とかくなにかに熱量を持った人が目に入りがちだ。沼み、っていうんですかね。テレビをつけてもマツコの知らない世界岡本夏生みたいな人が大口でおはぎを食べていたり。みんななにかひとつは好きなものがある。わたしは?そんなにひとつにハマったことがない。いまもない。お笑いアイドル漫画映画全部好きだけど熱しやすくて冷めやすい。就活のときからの悩みだった。だって消しゴムがめちゃくちゃ好きならMONOの会社に入るように頑張ればいいじゃん!なにもないからどこでもいいからどこでもいいんだよー!だから新卒では広告業界に入って「いろんな業界に関われば好きなものが見つかるかも」って探したんだよお。自分には一生好きなものなんて見つからない気がしていた。

 

それで、この言葉ですよ。83歳になっても好きだからやっているママの言葉。女性ひとりのお店だもん。きっとすごく大変な夜も、この日の雨なんて比じゃないくらい強い雨が降っていた夜もあったと思う。でも好きだからやれてる。カラオケのときから既に酔っぱらっていたのもあって、ママの作るハイボールが濃かったこともあって、泣いた。なんだわたしにも絶対好きなものがあるんじゃんって。きっとまだ出会ってないだけか既に出会っていて気付いてないだけ。人間ひとつはあるんだもんね!!!

と、好きこそものの上手なれ がものすごく心に響いた夜。

余計なお世話だと思いながら、背が小さいママが届かないのれんのねじれを直して帰った。

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雨で扉がバタバタしてたので閉めに行ってくれたママ

 

 

 

だからわたしは今日もこれが一生かけて好きな唯一のものかもしれないと思って深夜までずっとスプラトゥーンをやるのです。好きこそものの上手なれ!!

三半規管激弱すぎて毎日めちゃくちゃ酔って気持ち悪くなりながら深夜に寝てる。なんなの!

 

せばまんつ。